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A03 使う

A03班 吉川史隆

計画概要

 プラズマ医療科学の臨床応用論的学術基盤の構築と体系化

 近年注目を浴びている大気圧非平衡プラズマは、これまでの産業への用途に加え、様々な臨床における新規治療技術としての可能性が期待されている。 我々のグループは、名古屋大学プラズマナノ工学研究センターが開発したプラズマ照射デバイスを用い、プラズマの卵巣癌細胞への選択的死滅効果を確認し、そ の抗腫瘍効果を見出した(Iseki S. et al. Appl. Phys. Lett. 100, 2012, 113702)。 
 本研究はプラズマによる (1) 癌治療、(2) 再生医療の実用化に向け、(3) 種々の生体分子に及ぼす影響に関する基礎的研究を基に、臨床応用への包括的研究を名古屋大学大学院医学系研究科⇔プラズマナノ工学研究センターとの緊密な医工連携により実現することを目的とする。

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卵巣癌の選択的死滅
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(1)プラズマの癌治療への応用

 特に、現行の治療法では完治が困難とされている、進行性卵巣癌及び脳腫瘍への臨床応用を目指す。我々はすでにプラズマの直接照射による卵巣癌細胞 への抗腫瘍効果を見出しているが、臨床応用を念頭に置いた場合、生体内に浸潤または播種している癌細胞を他の臓器への影響無く治療することが望ましい。そ こでプラズマの直接照射に加え、プラズマを間接的に作用させる液中プラズマの抗腫瘍効果についても検討を行っている。 先端医療・臨床研究支援センターで は、プラズマナノ工学研究センター並びに産婦人科との共同研究により、プラズマを照射した培養液を用いて、アストロサイト正常培養細胞にはほとんど影響を 与えずに、グリオーマ(神経膠腫)培養細胞に対し選択的にアポトーシスを誘導することにより殺傷することに成功した。またその細胞内分子機構として、プラ ズマ培養液が生存・増殖シグナリングネットワークのハブとしての役割を果たすAKTキナーゼの活性を抑制することにより、グリオーマにアポトーシスを誘導 していることを突き止めた(Tanaka et al.Plasma Medicine, 1(3–4), 2011)。今後は、さらなるい、その作用機序の解明並びにがん治療への最適化を図る。さらに、各種動物モデルを用いたプラズマの抗腫瘍効果の評価を検討 していく行う。

(2)再生医療に対するプラズマの応用

  • 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科・腎臓内科学 准教授) http://www.med.nagoya-u.ac.jp/kidney/
  • 尾崎 武徳(名古屋大学医学部付属病院・腎臓病学・助教)

 我々はヒト皮下脂肪から分化・増殖能の高い低血清培養脂肪由来幹細胞の分離・培養に成功し、各種疾患モデルに対し、再生促進および免疫抑制能を介 して高い治療効果を示すことを明らかにした。これら疾患モデルに対しプラズマを併用することでより高い治療効果を得ることを目指す。

(3)プラズマが生体内へ与える影響とその作用機序の解明

 プラズマを医療分野で有効に使用するためには、その生物学的作用の原理を解明する必要がある。核酸、タンパク質、脂質へ及ぼす影響を生化学的に解 析すると同時に、細胞や動物臓器へのプラズマの影響を形態学的な解析により検討する。これらの多角的解析より、目的に応じたプラズマ発生装置の開発に有用 なパラメーターを特定することを目指す。

A03班 田中昭代

計画概要

 プラズマ・ナノマテリアル動態学の創成と安全安心医療科学の構築

 急速な発展を遂げているプラズマの医療応用では、主に大気圧プラズマが用いられているが、プラズマで生成した化学活性種は生体表面から最大 0.1mm程度の深さまで到達し、生体との即時的な作用を起こす。これに対して、ナノマテリアルは細胞に対する持続作用と高反応性を持ち、生体の中で持続 的に作用する。また、プラズマではプラズマの2つのパラメタを用いることで、1つだけを用いた場合には到達しえない顕著な効果(シナジー効果)が発現する という特長を持っており、プラズマ医療では、即時作用・持続作用・シナジー効果を生かした研究が行われている。
 しかしながら、プラズマとナノマテリアルを安全に運用するには、治療効果の評価だけでなく、健康影響や毒性などの安全性についても評価されるべきであるが、これらの研究は世界でも行われておらず、安全性に関する評価とガイドラインの構築は急務である。
 本研究では、生体に対するプラズマの即時作用、ナノマテリアルの持続作用及びこれらのシナジー効果の健康影響や毒性の有無をマクロスケール・ミクロス ケール両面から定量的に解析して、プラズマとナノマテリアルの安全性に関するガイドラインを構築することを目的としている。
以上、3つのアプローチにより プラズマ医療分野において、プラズマやナノマテリアルの健康影響や生体内動態の定量評価を行い、安全性に関するガイドライン構築を目指すものである。

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1)プラズマ・ナノマテリアル動態のマクロ解析

  • 分担研究者
    • 平田美由紀(九州大学・医学研究院・助教)

 プラズマ・ナノマテリアルは様々な経路から体内に吸収され、動物体内を巡り体外へと排出される。ここでは、実験動物としてラット、ハムスター、マウスを使用して、投与経路毎のプラズマとナノマテリアルの体内動態を解析して、健康影響や毒性の有無について検討する。

2)プラズマ・ナノマテリアル動態のミクロ解析

  • 分担研究者
    • 林 信哉(九州大学・総合理工・准教授)
    • 後藤昌昭(佐賀大学・医学部・教授)
    • 柳生義人(佐世保工業高等専門学校・准教授)
  • 連携研究者
    • 續 輝久(九州大学・医学研究院・教授)
    • 作道章一(琉球大学・医学部・准教授)

 実験対象として、線維芽細胞、好熱菌、酵母、骨芽細胞、タンパク質を使用し、コアシェルナノ粒子やプラズマを照射して、プラズマやナノマテリアルの動態を定量的に解析し、プラズマとナノマテリアルの活性に対する効果や毒性の有無を評価する。

3)医療用ナノマテリアル創製とプラズマ内部パラメタ解析

  • 分担研究者
    • 板垣奈穂(九州大学・システム情報科学研究院・准教授)
    • 米須章(琉球大学・工学部・教授)
  • 連携研究者
    • 内田儀一郎(大阪大学・接合科学研究所・准教授)

 ナノ粒子の動態評価では、ナノ粒子の存在位置を明らかにすることが重要である。コアシェルナノ粒子を作製することで、シェル部分の材質に対する効 果を評価しつつコア部分でナノ粒子の存在位置を明らかにする。結晶シリコンもしくはプラチナをコア、カーボンをシェルとしたコアシェルナノ粒子を作製し、 研究項目(1)、(2)へ供給する。また、それぞれの動態評価で用いるプラズマの内部パラメタを、プローブ法、発光分光法、レーザー吸収分光法などを用い て評価する。


研究成果

1)CIGSの亜急性毒性評価

 ラットを用いた太陽電池素材CIGS粒子(Cu、In、Ga、Seを原料とした化合物半導体を発電層に使った太陽電池)の毒性実験を行い、CIGSの亜急性毒性が投与量依存性に発現することが認められた。

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2)蛍光標識Siナノ粒子の体内動態

 蛍光標識Siナノ粒子をハムスターの気管内投与し、体内動態について検証した。肺に沈着した蛍光ナノ粒子は経時的に肺から体内の臓器に移行し、蓄積した。

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3)スパッタリング法を用いたインジウムナノ粒子の作製

 スパッタリング法を用いてInナノ粒子を作製し、作製したナノ粒子懸濁液をラットへの気管内に投与して、肺へのInの沈着を確認した。

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A03班 平田孝道

計画概要

 プラズマによる細胞/組織の活性化・改質及び再生医療への応用展開

  • 分担研究者
    • 森  晃(東京都市大学・工学部・教授)
    • 筒井千尋(東京都市大学・総合研究所・研究員)
    • 岩下光利(杏林大学・医学部・教授)
    • 工藤美樹(広島大学・医歯薬学総合研科・教授)
    • 金井孝夫(東京女子医科大学・講師)
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 本研では、臨床応用・適用を目的とした新規プラズマ治療装置の開発を行う。具体的には、開発のキーポイントとなる気相-プラズマ-液相界面反応場 の挙動解明、並びにプラズマ理工学、生理学、病理学、再生医療学等からの多角的アプローチによるプラズマ照射と細胞増殖及び生体組織内血管拡張作用のメカ ニズム解明に関する総合的評価・分析、並びに臨床応用展開に関する可能性と問題点について検証を行う。
 特に本研究では、低侵襲型マイクロスポット大気圧プラズマ源を用いた臨床用新規プラズマ治療装置の開発、各種培養細胞及び小・中動物を用いたプラズマ照 射実験、並びに分子生物学・内科学的検証による細胞/組織の活性化メカニズム解明と臨床応用に関する検討をと領域内の研究項目A01班及びA03班と連携 して行う。本研究に関する基盤を確立することは、日本における再生医療を含めた医学産業の現状を活性化して国際競争力強化に直結する新産業創出のキーポイ ントと成り得ると考えている。
 本研究達成のため、以下に示すような3段階の手順にて研究遂行する。

  • フェーズⅠ:低侵襲型マイクロスポット大気圧プラズマ源の開発及び臨床用新規プラズマ治療装置の試作
  • フェーズⅡ:各種培養細胞及び動物を用いたプラズマ照射実験、並びに分子生物学・内科学的検証
  • フェーズⅢ:細胞/組織の活性化に関するメカニズム解明と臨床応用に関する検討。
    さらに、フェーズ内を、(1)プラズマ装置チーム、(2)培養細胞チーム、(3)実験動物チーム、並びに(4)病理検査チームに分けて遂行する。

 本研究は、A01班:堀、節原、金子等と「プラズマ生成、モニタリング、制御、医療プラズマ装置・システム開発」にて連携し、A02班:水野、池 原、清水等と「プラズマと生体との相互反応のモデリング、理論確立、分子細胞生物学的操作と解析」にて連携体制を図る。また、A03班内においても、吉川 等と「プラズマによるがん治療、再生治療への展開、プラズマ医療科学の臨床応用論的体系化」、並びに田中等と「プラズマの人体への安全検証、生理学的安心 安全科学の確立、ナノ微粒子等による薬剤成形治療」の連携体制を図り、領域内における有機的結合力の構築・強化を推進することにより、医学分野を主体とし たものではなく、全く新しい体系による研究創造を展開できるものと考えている。更に、プラズマ医療ネットワークのサテライト拠点として産総研に構築される サテライト拠点『プラズマ医療分子生物科学・応用拠点』での装置・技術の共有化と人材交流を活用して連携することにより、研究活動を加速化すると共に、人 材育成を図る。

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